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調味料 その16 《大阪の蒲鉾(ハモとみりん)》
昔の蒲鉾の原料は、地域の近海でとれた魚が主体であった。
従って、地域により蒲鉾の美味しさにも特徴があった。
現在は、遠洋で漁獲された冷凍すり身を原料として使わざるをえないほど、近海には蒲鉾の原料となる魚の資源が少なくなった。
さて、大阪へ出かける度に「大寅」の蒲鉾を買ってくる。
関東で生活している筆者としては、小田原蒲鉾の味に馴れているが、ハモを原料としたこの会社の蒲鉾のうま味や歯応えは、自然な味わいを感じる。
そして、「大寅」のハモを原料とした「焼き板かまぼこ」は、大阪蒲鉾を特徴づける練り製品の一つのように思われる。
「大寅」の社長さんの話しによると、大阪蒲鉾の信条は、ハモを主体に使うことである。
明治9年に創業したときから、大阪沿岸でとれるハモを主体に、エソやその他の白身魚を原料としていたが、大阪湾でのハモの漁獲量が少なくなてから、東シナ海のハモを使っているとの話しである。
原料である生ハモ(1尾の重量が1.5kg前後のもの)を活き締めし、下処理が終ると、頭部に紐を通して吊るし、中骨を除く。
そして魚肉採肉機で身肉をとるのであるが、最初にとれた「一番身」のみを使い、美味しさと品質を高めている。
採取した身には食塩(天然塩)を少しずつ入れながら石臼で擂潰(らいかい)し、粘り(ゾル)をだす(普通は、擂潰機ですり潰す)。
これに砂糖を入れて煮詰めたみりんで調味し、成型する。
ハモを原料とした「はもいた」「焼き板かまぼこ」の特徴は甘く、魚肉のきめが細やかで、艶やかさがあり、味も足(弾力)も抜群である。
さて、大阪の「大寅」の焼き板蒲鉾の特徴は、原料のハモとみりんにあるといえよう。
これはみりんをたっぷり使うので、小田原、山口、愛媛、仙台などの板つき蒲鉾に比べると甘味が強く感じる。
一方で伊達巻は関東より甘味が控えめとなっている。
「はもいた」や「焼き板かまぼこ」は、みりんと砂糖を比較的多めに使うので、加熱工程でのアミノカルボニル反応により、蒲鉾は淡い茶色をしている。
その表面には、焼き板の名のとおり焦げ目がしっかりとつき、弾力性(「足」)も独特である。
50年ほど前に蒲鉾に関する大先生、故・清水亘先生が、私達の研究室にいる先生や学生を相手に10種類ほどの蒲鉾について、弾力性を中心とした官能検査をしたときに、この蒲鉾を高く評価していたことを思い出す。
かつての蒲鉾は、地域により原料に特徴があり、外観・弾力・うま味などにも特徴があった。今でも、昔ながらの原料や作り方を守っているメーカーもあるので、アンテナショップや百貨店の物産店で探し、地方の特徴を確認するのも、食生活を豊にする過程となるかもしれない。

                                                   文責:成瀬宇平
by kosakai_blog | 2010-11-05 12:03 | 調味料のいろは
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