筆者は「美味しい魚は?」と問われると、「トラフグ」と回答する。
クエ、タイを美味しい魚であると強調する人もいる。
いずれも白身魚で赤身魚ではないのは、日本人の嗜好は白身魚がもつ淡白な味を好む民族といえよう。
しかし、とくに脂ののった季節の魚に対する嗜好は高い。
フグの専門店では、フグの精巣(白子)を食べることをすすめる。
フグの白子は、中国の越の時代の美女のふくよかな乳房に似ているからということから、西施乳(せいしにゅう)ともいわれている。
とくに、2月のトラフグの卵巣は、産卵前で栄養分も蓄えていておいしい。
トラフグの白子からはふくよかな食感すなわちテクスチャーは、焼いても、鍋の具にしても失われない。
生体をつくりだす元であるから、栄養的にも優れた成分が含まれている。
一時、サケの白子が健康食として注目されたことがあったが、トラフグの白子にもサケの白子と同様に健康によい成分がたっぷりふくまれているはずである。
タラの白子(菊子)には比べ物にならないうま味がある。
富山県のフグの養殖場では、トラフグの80%がオスになるように養殖していて、フグの調理師免許をもっている職員が、トラフグを捌き、発泡スチロールに梱包して発送している。
文責:成瀬宇平