その54 《神饌のマダイは何処へ》
神社で、神饌として供える魚の中で、最も高い位置にあるのはマダイである。
「タイ」は「めでたい」につながるばかりでなく、美しい姿、「おめでたい」につながる赤色をしているからである。もちろん、マグロのトロのように脂っこくなく、上品な味をもっているからである。
神饌として供えたものは、儀式が終わると神職で分ける。
高級品は神社でもっとも高い位の宮司に分ける。
次に高価なものは権禰宜(ごんねぎ)、禰宜(ねぎ)に分けられる。
マダイは最高に高級な神饌なので、かならず宮司に分けられる。
しかし、宮司も毎日マダイを食べ続ければ飽きがくるので、形式的にはいったん宮司に分け、宮司から他の神職に分けるようである。
実は宮司の家族が毎日マダイを食べるのはつらいところがある。
その55 《愛媛県の郷土料理「たいめし」の味》
媛県の松山にでかけるある日のことである。
旅行の雑誌で、松山の旨いものを探していたら、同僚が「たいめし」を教えてくれた。
JRの松山駅近くの「たいめし」を提供してくれる店に入り、「たいめし」を注文した。
マダイの刺身、温かいご飯、さらに生卵がでた。
もともとは、漁師の沖料理で、熱いご飯の上にマダイの刺身をのせ、その上に生卵をかけて食べる。
ご飯の上にマダイの刺身をのせ、熱々のお茶漬けをかけて食べるなら、マグロやカツオの刺身をご飯にのせて、お茶漬けをかけて食べるのと同じ食べ方だから抵抗はないが、生卵をかけると生卵の粘りで食べにくくなる。
最近は、生卵をかける「卵かけご飯」の食べ方が減ってきたためか、積極的に食べなくなった。
文責:成瀬宇平