社長の呟き その7 《妄想「倶楽部と黎明期の日本橋」ー日本橋倶楽部会報より一部抜粋ー》 2015.7

妄想「倶楽部と黎明期の日本橋」

                      2015年7月号「巻頭挨拶」

                      理事 小堺裕一郎

「日本銀行のそれとたがわない紋様飾りが施された重々しい扉の前で、静かに目を閉じると猪苗代の穏やかな湖音とともに母の呼ぶ声が聞こえてきた。扉が開かれる音に目を開けると大會堂の中に恰幅の良い人物の姿を探し求める。万雷の歓声と拍手は、その人物が口を開くまで鳴り止まなかった・・・・・。大正4922日、それは日本橋俱楽部における北里柴三郎主催の野口英世の帰朝講演会の開会を告げるものであった。」

2012年、東日本大震災後の福島県復興支援旅行で「野口英世記念館」を訪ずれる機会があった。館内で偶然見つけたのが15年振りに帰国した英世の帰朝講演会を日本橋倶楽部で開催したとする一枚の写真である。

柴三郎は明治18年(1885ベルリン大学のコッホ博士の下へ留学する。

後に世界的に評価の高い細菌学者に成長した彼は明治27年(1894)、香港で猛威を振るっていたペスト菌を発見したが、その翌週にも仏学者が同地で発見する。2人は共にその第一発見者とされたが、その後柴三郎は第一発見者かどうかの論議で渦中の人となる。昭和51年米国の学者らの研究によってペスト菌の第一発見者であると発表されたが、実に80年後のこととなる。また明治34年(1901)に創設されたばかりのノーベル賞の初代候補者にも挙がりながら母国医学会の中傷に会い、受賞を逃している。

英世は柴三郎が創設した伝染病研究所に明治31年(1898)に入所した。彼の支援により明治33年(1900)に米国へ留学後、ロックフェラー医学研究所研究員として細菌学研究で頭角を現す。ノーベル賞候補として3度も名前が挙がったが、昭和3年(1928)アフリカの地で研究対象であった黄熱病に自ら罹患し、51歳の若さで、その3年後の昭和6年(1931)に柴三郎が脳溢血により78歳で亡くなり、明治・大正の近代日本黎明期に予防医学の基礎を築いた師弟はそれぞれ生涯を閉じるのである。

「旧伝染病研究所」(現・東京大学医科学研究所)の瀟洒な煉瓦造りの建物が白金台にある。内田祥三設計による昭和12年(1937竣工のこの建物の近くにある「近代医科学記念館」には両氏に関する資料が展示されている。また柴三郎自ら創立したこの「伝染病研究所」初代所長を辞し、大正3年(1914年)に設立した「北里研究所」もここからほど近い場所にある。この師弟の魂はこの地に留まり見守っているようだ。

日本橋は江戸末期から明治にかけて海外科学の習得の場所であった。シーボルトの定宿であった「長崎屋」(現室町4丁目)は蘭学・医学の発信地と言われており、英世の講演会場として当倶楽部を選んだ柴三郎の思いを感じずにはいられない。初夏の橋上から眺める日本橋川の緩やかな流れは長い歴史の川音が聞こえて心地よい。
                       文責:小堺化学工業㈱代表 小堺裕一郎


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by kosakai_blog | 2016-01-25 19:19 | 社長の呟き
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