食のサロン その67 《江戸・東京 食事情 ⑪ 料亭 》2015.11

江戸も文化文政の頃になるとグルメブームも到来し料理茶屋から料亭と言われる大きな料理店が登場する。
日本橋の料亭「百川」で巻起る勘違いによる騒動を面白おかしく話にした百川と言う落語がある。
オールドフアンなら昭和の名人三遊亭圓生の名口調を思い出す。

この百川は実在した料亭でペリー来航時に幕府の命により八百善と共に料理を提供したと史実に残っている。
圓生は落語「百川」の枕で日本橋浮世小路、鰹節で有名な「にんべん」のあたりに有った料亭と語っている。
百川と共にペリーに料理を提供したもう一軒の料亭が八百善である。
数ある江戸の料亭中で最も有名な一件と言える。
八百善4代目の残した料理本「江戸流行料理通」は八百善料理通と言われ現代にも通じる料理教本であると同時に江戸の料理と食文化を今に伝える貴重な書物である。
この八百善には数々の逸話が残っている。
ある粋人が八百善に上がり色々な物を食べ飽きたのでと茶漬けを所望したところ散々待たされた挙句代金が1両2分と言われる。
確かに美味しい茶漬けではあったがそれにしてもと尋ねると。
茶漬けに添えた香の物は当時春には珍しい瓜と茄子。
茶は宇治の玉露に米は越後の一粒選り。
時間が掛かったのは茶漬けに使う水を玉川上水の取水口まで早飛脚に汲みに行かせたとの事であった。
浅草の山谷にある八百善から玉川上流までと言うのは少々オーバーな様にも思えるが、高級を売り物にし、使用する水や食材にもとことんこだわった八百善ならではの逸話である。
この江戸を代表する料亭を訪れた歴史上の人物は多い。
江戸期には将軍徳川家斉も訪れた記録が残っている。
4代目栗山善四郎とは深い交友があり常連とされている酒井抱一や太田蜀山人、谷文晁。
葛飾北斎、渡辺崋山、幕末には天璋院篤姫、勝海舟。
明治の頃には木戸孝允、山縣有朋。文壇では森鴎外、芥川龍之介、菊池寛。
永井荷風はここで結婚式を挙げた記録が残っている。
時代を経て八百善も関東大震災で山谷の建物全てが焼失しその後も戦災による被害を受ける。
戦後はいくつかの地を経て銀座の共同ビルの地下に店を構え割烹家八百善として変わらぬ江戸の味を伝えていた。
真薯や魚素麺、白瓜の雷干し、デザートの白玉等八百善の名物料理が提供され予約もせずに訪れても嫌な顔をせず老舗としての接客対応をしてくれた物である。
その後新設された両国の江戸東京博物館に出店し銀座店は閉店された。
博物館を訪れる客にリーズナブルな江戸料理を提供していたがこちらも閉店し現在は八百善の店舗は無い。
現代において見栄えの良い京風料理が一般受けをする。
反面見えない処に手間暇をかける江戸料理は採算面等理解してもらう事が難しいのかもしれない。
東京でも日本料理店は京風料理全盛で江戸伝統の料理を提供する料理店は少なくなり残念に思うのは江戸っ子の僻みであろうか。
江戸料理の旗手であった店は無くなっても八百善の江戸料理は現在10代目栗山善四郎に伝わりさらに11代目に伝承されていると聞く。


                 文責:小堺化学工業㈱ 営業部長 青木知廣



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by kosakai_blog | 2016-01-28 19:52 | 食のサロン
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