冬の北陸の家庭の魚とカブを組み合わせた漬物である。
「すし」といわれるのは、すしのルーツを探るとご飯や麹を使い、なれずしのように乳酸醗酵により、醸しだしたものであるからである。
北陸では雷がなるころ、すなわち「ブリ起こし」が発生するころはブリも寒ブリで、脂がのって一層おいしくなる。
北陸の富山や石川では、冬になると塩漬けしたカブに塩漬けしたブリの切り身を挟み、麹とともにさらに数日間漬け込んで作る。
北陸地方の正月には欠かせない伝統食品であるが、食べる日に合わせてカブやブリの塩漬け、さらに麹漬けを続ける。
新鮮な白カブや青カブを丸のまま5~7%の食塩で4~30日間塩漬けする。
ブリは3枚におろした後、15~20%の食塩で4~6日間塩蔵する。
塩蔵した後は、カブは1.5cm程度の厚さに輪切りし、その厚さの中間に切れ目を入れる。
塩ブリは、スライスしてカブの切れ目に挟む。
副材料としてトウガラシ、刻みニンジン、昆布を用意し、お湯で溶いて熟成させた甘酒状の麹とご飯を加え、重石をのせて、4~5日間漬け込む。
近年はカブの代わりに大根を使った「ダイコンズシ」が人気である。
出来上がった「かぶら寿し」は近所にお裾分けをし、今年の「かぶら寿し」の出来具合を批判してもらう習慣がある。
一年中販売している百貨店もあるということから、冬の限定品とは言いにくくなっているが、出来てからの保存時間が長いと酸味が出ておいしさが感じられなくなる。
本当の食べ頃は、甘味があるので辛味のある日本酒や白ワインに合う。
現在市販されているものは、1個ごとにプラスティックの袋に入っているので、保存も取り扱いに便利になっている。
文責:成瀬宇平