富山の名産の「イカの黒作り」は、材料にスルメイカを使用したものやホタルイカを使用したものがある。
関東で食べる「イカの黒作り」は、スルメイカの細切りを使用したもので、瓶詰めのものが多い。
瓶詰めというのは、保存を目的で作ってあるためか、塩味がやや強く感じる。
6月の中頃、富山市内のホテルで行われたパーティーに供された「イカの黒作り」は、関東で食べるものより、細い身で甘味もありコクもあった。
食べようとしたら、地元の人から「歯が黒くなる」とのアドバイスをいただいた。
もともとイカ墨料理の好きな私は「注意します」といって、食べはじめた。
富山の人によると、6月頃は、イカの黒作りの美味しい時期ではないとのことであるが、魚に関係する人達のパーティーであったためか、この機会に合わせて作ったようである。
これを肴に富山の日本酒を賞味した。
東京のホテルのパーティーとは違って、豪華な肉料理やフランス料理などがテーブルに来るわけではないが、地元の手作りの名産品に恵まれた一時であった。
ところで、イカの墨のうま味成分には、グリシンやグルタミン酸などのアミノ酸が関与している。
イカ墨は脂質も含まれているので、イタリア料理のイカ墨入りのスパゲッティのように、墨は麺にくっつくのである。
沖縄のイカ墨の汁は、肉や野菜の入った汁にイカ墨が添加されている。
なかなかの珍味で、沖縄へでかけた際には、是非、試すことをすすめる沖縄料理である。
本当は家庭料理がよい。
家庭により作り方が違うからである。
ちなみに、タコの墨には脂質が少ないためか、細切りイカやパスタにつきにくいのである。
文責:成瀬宇平