食のサロン その19 《江戸前鮨の話 ⑪》 
江戸前鮨は伝統を守りながらも明治以降変化を続けている。
同じ江戸前の鰻店が原材料の鰻が養殖物になった以外技法も形も、味付けも殆ど変化していない事を考えれば対照的かもしれない。
昔は食べなかったトロを好んで食べるようになり、イクラやウニも軍艦巻きや手巻き鮨にして食すようになった。
バブル全盛期にはスシバーなるものが流行りそこでの人気ネタが鮨好きを驚かせた。
アボガドを使ったカリフォルニヤロール成る物やツナマヨネーズやエビマヨネーズ、フォアグラやキャビアも鮨として登場した。
海を渡った日本の鮨が変化して逆輸入されたものである。
江戸前を売り物にする鮨店で、もしそのような物が出されたら、おそらくその店には二度と通わない事になるだろう。
しかしスシバーで出されるそれは江戸前鮨とは異なる食べ物ではあったがそれなりに食べる事は出来た。
いやフアッション性のある洒落た雰囲気の店内で間接照明の下ワインと共に頂けば実に美味しいという事になる。
あまりに変化が大きすぎて付いていけなかっただけなのかもしれない。
ネギトロと言う鮨ダネがある。
何処が始めた物か定説は無いが、鮨ダネの一つとして持ち帰り鮨を中心に定着した感がある。
下町の気取らない店でありネギトロ巻きを世に広めた店ではないかと思う鮨店がある。
池波正太郎の生まれた浅草聖天町の近く吉野町に店を構える「金太楼鮨本店」である。
修業に来た職人に暖簾分けをして独立させるべく仕事を教える。
見習い職人はいつか自分の店を持とうと一生懸命働いて仕事を覚え店も繁盛した。
ここの職人が全国鮨コンクールの各部門で上位を独占した事もある。
一本買いしたマグロの中骨に付いたいわゆる中落ちや策取りした跡の切れ端に刻みネギを加え叩いた物を海苔巻きにした。
以前は処分してしまった部分を工夫して食べるとなかなかの味であった。
刻んだ沢庵と混ぜても巻き鮨としたがこれも美味しい。
北海道札幌の名店「すし善」の名物にもなっているトロタクである。
またこの店は軍艦巻きに抹茶アイスを乗せたアイスクリームの鮨も出し女性や子供に人気をはくした。
突拍子も無い事を考える物であるが技術に裏打ちされながら伝統にとらわれない愉快な店でもある。
最近では都内の鮨店でも駿河湾特産のサクラエビの生を乗せた軍艦巻やノレソレと言ってアナゴの稚魚を軍艦巻で出す店もある。
ちなみにノレソレは高知県あたりで使われる方言らしい。
京漬物の千枚漬を握ったり、九州あたりで食される芽ネギを握った鮨もある。
フグやアラを名産とする地方ではこれらの高級魚も鮨にした。
これらは江戸で生まれた江戸前鮨が地方に根付き地方の特産品をネタにして本家に戻ってきたという事になる。
近頃は世界寿司コンテストなるものがロンドンで開催されているらしい。
世界各地域や国から自慢の鮨を一品勝負で競い合うコンテストとの話である。
宮城県の「あさひ鮨」でそのコンテストで世界一になったと言う鮨を握ってもらったことがある。
あさひ鮨は地元気仙沼の特産品フカヒレを使った鮨を名物として知られた店である。
この店の職人が国内予選を勝ち抜いてコンテストに参加し優勝したとの事であった。
その鮨は軍艦巻きに特産のフカヒレを乗せたものであったがフカヒレの上に金粉が飾ってあり食べるとなんとシリアル(コーンフレーク)が口の中で広がった。

                                                         文責:青木知廣
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by kosakai_blog | 2011-09-26 13:15 | 食のサロン
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