食のサロン その26 《江戸前蕎麦の話 ⑥ 》
蕎麦屋の系統にはその歴史や蕎麦自体の特徴から藪系、更科系、砂場系等と言われる普系があるとされる。
藪、更科、砂場を称して江戸蕎麦の3大普系と言われている。
砂場は元々関西、大阪を発祥とした蕎麦の系統であるらしい。
大阪城を築城した時の砂置場周辺に商店街が出来その商店街が通称砂場と呼ばれた。
その中にあった蕎麦屋も砂場の蕎麦、砂場蕎麦と呼ばれるようになったとされている。
大阪新町には砂場跡の石碑があり本邦麺類店発祥の地大阪築城史跡・新町砂場とある。
碑文には太閤秀吉大阪築城により浪花の町に資材蓄積場設けられ新町には砂の類置かれ通称砂場と呼ばれた。
工事関係の人が集まり賑わい食要す中、いずみや、津の国屋等麺屋として開業されたとある。
寛政十年(1799)刊とされる摂津名所図会の中で「砂場いずみや」の図として紹介されている蕎麦店の絵図がある。
大きな店構えに「す奈場」と染められた暖簾の掛かる外観図のほか賑わう店内の様子や蕎麦を挽く石臼等を画いた図が残る。
石臼の数、蕎麦を打つ、ゆでる、運ぶ人数、それを食べる客の数は百人をゆうに超え大した繁盛ぶりと店の規模の大きさに驚かされる。
当時の名物蕎麦店であった事は窺い知れる。
この砂場(浪速の新町)で繁盛した蕎麦店も残念な事に明治期に廃業となった様である。
大阪発祥の砂場蕎麦がどのように江戸に伝わったのかは分からないが時同じくして江戸にも砂場蕎麦の記録が現れる。
寛永4年(1751)の「蕎麦全書」には江戸薬研掘りに「大和屋大阪砂場そば」天明年間(1781~89)刊行の「江戸見物道知辺」には「浅草黒船町砂場蕎麦」の名前が登場している。
神田藪そばの初代は「蔦屋」の神田店(連雀町店)を引き継ぐ前は浅草蔵前で「中砂」と言う店を出していて砂場系だったとの話を耳にした事があるが定かな処は分からない。
いずれにしても東京には砂場を名乗る歴史のある蕎麦店は多い。
幕末に大阪屋砂場より暖簾分けにて高輪にて創業し明治2年に日本橋室町へ移転して現在に至る「室町砂場」は創業130年の老舗である。
砂場系蕎麦店を代表する名店であり天もりの元祖とも言われている。
初代大阪屋長吉が天保10年に創業した歴史を持つ「巴町砂場」は一番粉の細打ち蕎麦と薄味つゆが特徴の蕎麦店でとろろ蕎麦はこの店の名物となっている。
「虎ノ門大阪屋砂場」は武家の娘であったが糀町七丁目砂場の幼女として預けられた初代のおかみが明治5年現在の地に創業。
現店舗は大正12年普請の高級蕎麦店として知られている。
江戸における砂場本家とされる糀(麹)町砂場は都電三ノ輪橋駅近くの商店街に所を移し「南千住砂場」として店を構えている。
この「南千住砂場」が現在「砂場本家」を名乗っている。
これらの店が中心となり昭和8年に砂場長栄会が結成されその後「砂場会」と改名された。
砂場の普系とされる蕎麦店によるこの会には以前は180からの会員店舗数があったと聞いている。
江戸蕎麦文化の創世記に大阪発祥の砂場蕎麦がかかわっていたのは事実のようである。
大阪や関西は饂飩文化と思いこんでいる我々には面白い話である。
ちなみに大阪、京都、関西にも美味しい蕎麦店は多い事を付け加えたい。
                                                      文責:青木知廣
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by kosakai_blog | 2012-06-22 17:48 | 食のサロン
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