食のサロン その29 《江戸前蕎麦の話 ⑨》
二八蕎麦とよく言われる。
蕎麦の何を指す言葉なのか、これには2つの説があるようだ。
当時蕎麦一杯の相場価格が16文で江戸っ子がしゃれて2×8で16から二八蕎麦と呼んだと言う価格説。
蕎麦粉8に対して小麦粉2の配合で蕎麦を作ったのでと言う配合比率を指して呼ばれたと言う説である。
価格説は物価には変動があり時代によっては16文が当てはまらないとして8対2の配合説を唱える人が多いようだ。
確かにつなぎとして小麦を2割ほど入れると良い蕎麦を打つことができる。
蕎麦粉10に対して小麦粉2の割合で蕎麦を打つ事もありこれを業界では外二八と言う。
こちらも風味の強い良い蕎麦となる。
どちらの説も、もっともらしい根拠もあるが否定する根拠もあり確かな処は分からない。
当時の風潮等を考えると案外単純に価格から客がそう呼んだあたりが真相なのかもしれない。
小麦粉に含まれるタンパクのグルテニンやグリヤジンはグルテンとなり網目構造を作り弾力を形成する。
饂飩やラーメンを一晩寝かせたりするのはグルテンの作用でこしを出すためである。
蕎麦を打つ時のつなぎには信州では地元でとれる山芋を使う事が多い。
新潟では海藻の一種のフノリを使う地方がある。
しこしことした触感と、のど越しの良い蕎麦として十日町の小嶋屋等が有名である。
山間部のある地域ではヤマゴボウの葉の繊維を使う処もある。
鶏卵を使ったらんぎり蕎麦もありこちらは更科系の蕎麦店で打たれる事が多い。
蕎麦は挽きたて打ちたて湯がきたてと言われる。
挽いたそば粉は空気中の酸素により酸化し風味が悪くなる。
保管温度も低温でなければならない。
したがって挽きたてに限ると言う事に成る。
挽く時に熱が掛かってはならないので昔ながらの石臼で挽くのが良いとされる。
蕎麦を打つ時熱を掛けず手早く空気を含まないように。使う水分も最小限にかつ粉っぽくならないように等々熟練の技と繊細な感覚が必要となる。
湯がき加減も芯に熱が通る直前のタイミングにてザルですくい上げ冷水で一気に引き締める。
放置しておくと水分が芯までしみこんで蕎麦が伸びてしまうので食べる方ものんびりしては居られない。
蕎麦が伸びるとよく言われるがこれは蕎麦の成分が水溶性による物と考えられる。
蕎麦は作り手も食べ手も江戸っ子気質のせっかちな人が良いのかもしれない。
白米を食べる江戸では脚気の患者が多く江戸わずらいと言われた。
ビタミンB1の欠乏症であるが蕎麦好きの人はなりにくかったのではないかと考えられる。
そばのタンパクや栄養素は水溶性なので一部が茹で釜に流出してしまう。
蕎麦作りに使う打ち粉は花粉(はなこ)とも言われるそば粉を使うがこちらも茹で湯に溶けてしまう。
蕎麦店に行くと蕎麦湯が出されるが小堺化学工業㈱顧問である鎌倉女子大名誉教授の成瀬宇平はこれを是非頂くよう推奨している。
蕎麦を食べ蕎麦湯を飲む事でルチンやビタミンB1を無駄なくとる事が出来栄養的にも理にかなった物となる。
蕎麦店にもこだわる店があり中にはわざわざそば粉を溶いてどろっと濃くした蕎麦湯を出す店もある。

                                                        文責:青木知廣
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by kosakai_blog | 2012-09-25 17:23 | 食のサロン
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