食のサロン その30 《江戸前蕎麦の話 ⑩》
いくら良い蕎麦を打ってもそばつゆが悪ければ美味しく蕎麦を食べる事が出来ない。
まさに麺としての蕎麦とつゆがあって蕎麦の味は形成される。
生かすも殺すもつゆ次第となる。
蕎麦つゆに用いられる「かえし」は醤油、味醂、に砂糖等を加え寝かした物である。
寝かせる事で醤油のかどが取れ熟成されたまろやかな味となる。
一般に過熱をして保存した物を「本かえし」、醤油を加熱しないでなじませた物を「生かえし」、加熱した後に未加熱の醤油を更に加えた物を「半生かえし」等と呼んでいるようである。
この「かえし」に東京では主に鰹節から取った「だし」を加えて蕎麦つゆとしている。
精進料理の名店でも美味い蕎麦を出す店がある。
しかしもう一つ蕎麦の味にうなずけない事があり考えてみるとやはり「だし」の味と思い当たる。
精進料理では鰹節が使えないのでどうしても昆布主体に椎茸等のだしになる。
本枯節を使った江戸前のだしに慣れ親しんだ舌には何か足りない気になる物である。
地方によっては鰹節だけでなく鯖節や他の魚でだしを取るところもある。
新潟県佐渡小木町にある七右衛門は佐渡産のそば粉で打たれた蕎麦をぶっかけ蕎麦として提供する明治
末期創業の名店である。
田舎風の蕎麦にアゴダシ(トビウオのだし)のつゆで評判を得ている。
兵庫県出石は市内に40件以上の出石蕎麦店がある。
城主が信州上田から国替時に蕎麦職人が移り住んだ事が発祥で伝来300年とされる。
そばの実を丸引きにした風味のある蕎麦を出石焼の小皿に盛って提供する。
だしはメジカ(宗田節)に昆布等を合わせて作られる。
創業300年と言われる南枝の他、入佐屋、永楽蕎麦等が有名店である。
蕎麦と魚の相性では「にしん蕎麦」がある。
東京でも「にしん蕎麦」を提供する店は多いがやはり発祥は京都らしい。
明治期に総本家にしん蕎麦松葉の二代目松野与三吉が発案したと言われている。
松葉は元祖にしん蕎麦の味を守って繁盛している。
廣島県福山の名代御蕎麦処大市では季節になると名産の牡蠣を使った「かきそば」を提供している。
廣島牡蠣の風味が蕎麦と絶妙で評判が良い。
茅場町長寿庵のように都内でも季節になると牡蠣蕎麦を提供する店は増えて来ている。
長寿庵と言う屋号を持つ蕎麦店は多い。
歴史を遡ると元禄のころ三河蒲郡出身の三河屋惣七が江戸京橋にて長寿庵と言う蕎麦店を開業した事につながるらしい。
明治5年の大火の後に銀座の街が煉瓦造りとなった。
この時に銀座竹川町に煉瓦造りの洋館として蕎麦店長寿庵も生まれ変わった。
当時の蕎麦屋としては異例のたたずまいにて評判を得たらしい。
ここで修業した弟子たちが次々と独立して長寿庵を名乗ったようである。
現在既にこの店は無いが銀座7丁目の跡地に建つビルには「元祖長寿庵の碑」が刻まれている。
現在長寿庵を名乗る都内の店としては茅場町長寿庵が老舗として有名である。
赤坂長寿庵や銀座長寿庵、両国長寿庵等を中心に孫弟子や又その弟子によってそれぞれの長寿庵の会を作っていると聞く。

                                                        文責:青木知廣
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by kosakai_blog | 2012-10-22 16:18 | 食のサロン
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