食のサロン その39 《江戸前天麩羅の話 ⑦揚げ加減は職人の腕?》
天麩羅を揚げる時に使用する小麦粉は通常薄力粉を使用し冷水にてかき混ぜすぎないように溶いていく。
かき混ぜてグルテンが強くなると揚げた時に衣に含まれる水分をはなし難くなりサクッとした食感にはならない。
氷を使って溶く水を冷やしたり小麦粉自体を冷やしたりするのもグルテンを抑える為である。
揚げる時には衣の水分と油分を素早く置き換える事が必要になる。
同時に高い温度で短時間に調理する事により具材となる天麩羅種も風味や栄養価も損なわず美味しく食べる事が出来る。
水分を飛ばして揚げた衣は置いておくと空気中の水分を吸って湿気をおびてくる。
それによりサクサク感が失われシナッとなって来てしまう。
すなわち天麩羅を美味しく食べる原理は揚げる寸前に素早く衣を作り材料にまとわせ高温のたっぷりの油でサッと揚げる。
食べる方も揚げたてを提供されたら時間を置かずに食べる事が最良と言える。
小麦粉を配合する場合もあり、その場合はもじどおりその店の天麩羅粉となる。
粉の種類を季節によって使い分ける店もある。
溶き水に鶏卵を加える場合もありこちらも卵のタンパクや油分を利用して美味しく揚げる工夫をした。
昔は卵黄を混ぜて揚げ上がりの色から金麩羅、卵白を混ぜて銀麩羅等ともじった言い方をしていた店もあった。
天麩羅を揚げる温度は180度位で目安としては溶いた衣を揚げ油に落し沈んでもなべ底に付かない内に上がって花開くような温度が良いとされる。
職人が水で溶いた天麩羅粉を油に落して確認するのは頃合いの温度を確かめる為である。
揚げる材料によっても火の入り加減を調整し一度に鍋に投入する量も油の温度が下がらないように考えて行う。
余熱も考慮し少し生の部分を残して鍋から上げ余熱を使って良い頃合いにするのも職人技である。
経験を積めば天麩羅の揚がり具合を音で聞き分ける事も出来る。
油に投入したての音と火が通り始めた音、頃合いにより微妙に変化してくる。
それらを聞き分けて自身がここぞと言うタイミングで天麩羅鍋から引き上げる。
このタイミングは食材によっても店や職人によっても違う処が又面白い。
要するに天麩羅職人は五感を使って自分の考える最も良いと思われる揚げ方を工夫している事になる。
天茂では薙鮎を揚げる時は柔らかい腹の部分に衣を多く付け頭と尾の部分には衣を付けずに頭と尾を持って油に浮かすように投入する。
内臓を含んだ腹の部分の衣が薄いとパンクしてはじけ飛んでしまい風味を持った薙鮎の醍醐味が台無しになってしまう。
この揚げ方であれば頭と尾の部分はカラッと揚がり胴体の部分はふっくらとジューシーに仕上がる。
粉の溶き方や温度、材料への付け方等により衣の食感はもとより素材の特徴を左右する事となる天麩羅は揚げ手の職人の腕の見せ処と言えよう。
客もまたその揚げ加減を味わい自分の好みの店を見つけるのが天麩羅を食す楽しみとなる。

                                                        文責:青木知廣
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by kosakai_blog | 2013-07-10 15:58 | 食のサロン
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