食のサロン その44 《江戸前天麩羅の話 ⑫天麩羅の魅力はつきない?》
東京における天麩羅の歴史や普及において特記される店がある。
昭和5年創業の銀座天一は多くの文人や著名人に愛された名店である。
戦後吉田茂の命で官邸に揚場を設け進駐軍司令部との交渉を円滑に進めるよう天麩羅外交が行われたがそれを受け持ったのが天一である。
バーナード・リーチやフランク・シナトラは来日するたびに天一を訪れたと言う。
またこの店はカレー塩と言ってカレー粉に塩を混ぜた物を天麩羅に付けて食す食べ方を考案したりもしている。
天麩羅を抹茶塩、山椒塩等で味あわせる店も多い。
抹茶塩等、塩で天麩羅を食させるのは鰹節だしの天つゆが使えない精進料理で良く用いられる食べ方である。
新宿の老舗船橋屋ではローズマリーやオレガノ等7種のハーブを使ったハーブソルトを提供している。
天麩羅が洋風になったような気がするのも乙な物である。
変わり揚げを楽しめる店も増えて来ている。
小柱を海苔で巻いて揚げる小柱の磯部揚げ、短冊に切ったイカにタラコを挟んで揚げたイカモミジ、シイタケにエビのすり身を詰めた物、干し柿のチーズ巻、ハスの穴に明太子を詰めて揚げた天麩羅、生ウニを海苔で覆って衣を付けウニに火を通さないように揚げた天麩羅もある。
真薯を湯葉で包んで揚げた物や長芋に梅肉を挟んで海苔で巻いた会席料理風の物までさまざまである。
最近西洋料理店ではオープンキッチンが多くなってきている。
シェフズテーブルなるシェフが客の見ている前で調理して、料理を提供する試みが評判を得ている店もある。客は料理の出来るまでシェフの調理方法を五感で感じながら出来立ての料理を楽しめる、新しいスタイルで評判を得ている。
天麩羅専門店はと言うと何のことは無い昔から、オープンキッチンで客はシェフズテーブルよろしく揚げるしぐさを見ながら音と臭いを感じて揚げたての天麩羅を楽しんでいたわけである。
このシェフならぬ天麩羅職人の技はノウハウがいっぱいで素人には分からない手間がかかっている。
したがって簡単に分かるものでは無く、とてもそれを詳しく説明する事は出来ない。
お座敷天麩羅で知られる天政の仕事ぶりを例にざっと見てみると、天政サイズと言われるさい巻エビの頭を取りしっぽの部分を形よく切って整える。
殻をむいて背ワタを取り揚げた時にエビが丸まらないように切れ目を入れ、塩水に10~15分漬け込み布巾にて水気を取る。
全卵3に卵黄1の割合で冷水に溶き、冷やしておいた薄力粉を振るいで振ってダマを除き、太箸にてさっと混ぜる。
少々上に粉が浮いているような状態にて箸を持ち上げると箸の先から流れるような粘度に溶いていく。
衣を付けて揚げる事になるのだが、味見をしながら調理する事は出来ない。
職人の経験と技術により瞬間に調理される、言わば一発勝負のやり直しのきかない料理である。
天つゆは醤油、みりん等を調合した元だれを3~4か月熟成させだし汁で割って使用される。
天麩羅は1に素材2に油3に職人の腕とよく言われる。
下ごしらえに手間暇をかけて細工は流々いざ揚場と言う舞台へ。
江戸から続く食のエンターテナー天麩羅の魅力はつきない。

                                                        文責:青木知廣
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by kosakai_blog | 2013-11-27 18:26 | 食のサロン
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