食のサロン その52 《江戸前鰻の話⑧ 故郷は鰻に聞いてみる?》
近年鰻好きとしては肩身の狭いニュースが多い。
シラスウナギの捕獲量が激減している事にある。
ウナギを絶滅危惧種として国際取引を規制する動きもある。
個体数の減少傾向が絶滅の恐れのあるレベルに達しているとの話もあり、宮崎県では親ウナギの禁漁期間を設け、産卵期の親ウナギを保護している。
ウナギは完全養殖が出来ない為養殖にあたって稚魚を捕獲して育てる方法がとられている。
ウナギを産卵させて卵から孵化させ養殖する事は非常に困難とされている。
海で育ち川を遡上して産卵する鮭とは逆で、川や湖沼で育ち海にて産卵するウナギの習性が養殖を難しくしているようだ。
したがって長年、毎日何十何百と鰻を割いている職人でさえ鰻の卵を見た人はいない。
目利きの職人も鰻の良し悪しは分かっても、雄雌の判断などできないのである。
学術的にもウナギは何処で産卵されどのように育ち日本の川を上って湖沼に生育するのかが長年の謎であり、確認解明されたのはつい数年前の事である。
東京大学の構内においてうなぎ展があると聞いて、赤門をくぐって見学に行ったことがある。
ウナギ博士として知られる、東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授の集大成とも言える博覧会であった。
塚本教授とその調査団は、今まで謎とされていた日本鰻の産卵場所を、西マリアナ海嶺南端部と特定する事に成功した。
その方法は太平洋を鰻の稚魚を追い求め、孵化したての幼生(プレレプトケファレス)までさかのぼり、産卵したての受精卵までたどり着く気の遠くなるような作業であった。
海で生まれたウナギはシラスウナギと呼ばれる稚魚に成って川を上り、成長した後川を下って海で産卵する事はよく知られている。
しかし産卵やシラスウナギに成長する海での生態は、長い間謎とされていた。
産卵後孵化したウナギの幼生はレプトケファルスと呼ばれ、これが海で成長し変態してシラスウナギになる。
レプトケファルスは、水中に漂う姿が風にたなびくヤナギ葉のようなので「ヤナギ葉幼生」とも言われる。
さらにその後これも大きな謎であった孵化したての稚魚の餌も突き止める事に成功し、日本人の長年の夢である鰻の完全養殖に向けた明るい話題も提供している。
近い将来卵から育てる鰻の完全養殖が実現される事を心待ちにしている鰻好きは多い。
都内に鰻屋を営む店が数件しかなくなり、「鰻重はここ数年食べて無い」江戸っ子がそんな悪夢のような話をする日が来ない事を祈るばかりである。
愛知県のウナギ養殖会社が2013年に、フイリッピン産シラスを池入しアンギラ・ビカーラ種の養殖販売に目途を付けた。
現在中国ではヨーロッパ産のアンギラ種、アメリカ産のロストダラー種、東南アジア産のビカーラ種とマルモダラー種が出荷されている。
日本産ジャポニカ種以外の鰻も既に私たちの口に入っているのかも知れない。
シラスウナギの捕獲量が減って来たのは、資源の枯渇に加え海域の海水温変化も起因しているのではないか。
産卵場所が海水温の変化や気象条件等により移動していれば、黒潮に乗って移動する鰻の稚魚が日本にたどりつかなくなるのではないか。
かつて北海道で沢山漁獲されたニシンのように・・・。
あれこれ考えながら食べる鰻重はいつもより箸の運びが遅くなる。

                                      文責:小堺化学工業㈱ 営業部長 青木知廣
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by kosakai_blog | 2014-07-18 14:08 | 食のサロン
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