食のサロン その53 《江戸前鰻の話⑨ タレは鰻店の宝物?》
天丼・かつ丼ときても鰻は鰻丼では無く鰻重のイメージが強いのは、蒲焼の長さが丸い丼よりも長方形のお重に合うからだろうか。
鰻好きの中には、鰻もお重では無く鰻丼が良いと器にこだわる人もいる。
落語家の柳家小さんは、湯島にある鰻店「小福」に自分専用の丼を預けていたと言う話を聞いた事がある。鰻丼の起源については、江戸時代「宮川政運」著の物事の起源を表した書に今の人形町あたりの芝居小屋の主人「大久保今助」が考案したと言う説がある。
蒲焼とご飯にタレがしみ込んだ味が、芝居町を中心に人気となり近隣の大野屋が元祖鰻飯として売り出したとの記述もある。
鰻店によっては値段の安い方は丼で提供し高価になると鰻重になる店もある。
実際に鰻の値段はその大きさの違いによる物である。
今のように蒲焼にする鰻を割いて開く技法は、江戸中期に上方から江戸に伝わったとされている。
現在はどの鰻店でも鰻を割く包丁は専用のサキ包丁が用いられている。
その鰻を割く為の包丁は地方により独特の形に工夫され、江戸サキ、大阪サキ、京サキ、名古屋サキ等とそれぞれ異なるようである。

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歴史ある鰻店で最も大切にされているのは、その店に代々伝わるタレである。
秘伝のタレと言う事になるのであるが意外に配合自体はシンプルな物が多い。
創業200年を超す都内屈指の老舗「神田川本店」の特徴である辛口のタレは、醤油と味醂のみを配合しそれ以外調味料や糖類は一切使わないそうである。
「尾花」も醤油はまろやかな香りが特徴の小豆島のマルキン醤油とこだわるが配合は、醤油と味醂のみとの事であり他の老舗については「野田岩」等もしかりである。
企業秘密で実は隠し味があるのではと邪念も抱くが、実は長年蒲焼を焼いて来たが故のうま味成分が蓄積される事に秘密があるらしい。
何度もタレ付けされて焼かれた蒲焼は、メイラード反応を起こしてコクと深みを増し同時に鰻からのうま味成分が加わる。
それらを含んだタレは独特の風味を持つ事になり、歴史によって作られるその店独特のタレとなる。
老舗のタレは創業以来絶やさず継ぎ足される事により、何万匹か数えきれない鰻のうま味を備えている事になる。
関東大震災の時にタレ壺を抱えて火の中を逃げた。
戦時中に空襲を受け、戦火の中から命がけでタレだけを運び出して守った等の話が残る老舗は多い。
そんなタレをつけて焼かれる蒲焼は、香りを出す為にも炭火が一番と言われている。
使われる炭は最上級の紀州備長炭を用いて火を起こし、炭から10数㎝離して焼くのが良いとされている。
多くの鰻店は素材としての鰻へのこだわりを持っている。
もちろん入手しにくい高価な天然物もあるが、養殖でも育て方にこだわったブランド鰻がある。
「うなぎ坂東太郎」は忠平㈱が手掛ける鰻のブランドで、浅草駒形の「前川」始め各鰻店では他の養殖鰻とは区別された蒲焼とされている。
焼津の㈱供水で養殖される「大井川・供水(きょうすい)うなぎ」も幻の鰻とされ評判を得ている。
これらは餌にこだわり、環境を整えストレスを掛けないよう時間を掛けて育てる事により、天然に近い養殖鰻を提供している。
鰻の蒲焼と言う料理は100年前から変わらず、これからの100年もほとんど変わらないだろと言う人がいる。しかしそれに係る人々のたゆまない創意工夫は、江戸の昔から今日に至り今後100年もきっと続けられていくと確信している。

                                      文責:小堺化学工業㈱ 営業部長 青木知廣
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by kosakai_blog | 2014-08-19 17:56 | 食のサロン
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