食のサロン その56 《江戸前鰻の話⑫ 天然鰻は腕で仕上げる?》
関東では下りの青に代表される天然鰻はいくら養殖の技術が向上したと言っても及ぶ物ではない。
しかし天然の上物を蒲焼に仕上げるには大変な技術が必要となる。
鰻店は数多くあるがその技術を持つ店と職人は多くは無い。
1メートル近くもある天然鰻を名物大串として提供するのが南千住の「尾花」である。
以前は天然鰻を売りにして天然鰻の大きな看板を掲げて日によっては提供する鰻の7割方が天然であった事もあったと聞く。
天然鰻と染め抜かれた暖簾をかき分けて店に入ると、店内には釣り針ご用心の張り紙があり、土産に蒲焼を持ち帰る紙袋にも天然鰻の印刷がされていた。
残念ながら今は天然の文字が無くなってしまい、釣り針に注意する事も無くなってしまったようである。
この店の蒲焼を別の鰻店の職人は、串に刺した鰻をあの口に入れるととろけるように軟らかく焼き上げる技術に感心をしていた。
鰻を焼いた経験のある人であれば、そう思っても不思議ではないと思われる。
名物尾花の大串はどのように作られるのであろうか。
目打をした鰻を背開きにし、キモ、中骨、向こう骨、背ビレ、腹ビレを取り除く。
さらに針を打って固定し削るように、小骨を除き頭と尾を落したのち等分に切る。
左から2~3cmの間隔で一か所に2本の串を打つが、串は平行よりやや先すぼみの八の字とする。
この時の串は肉が盛り上がるように、身を縮めて厚みを増した鰻の中央に打つ事が大切である。
素焼きは強火の炭で、皮から焼き手返しを何遍も繰り返し火を良く通す。
頃合いとしては、皮に米粒大の細かな焼き目が付いて来るまで焼き上げる。
焼きあがった鰻はさっと水洗いをしてから、大きさにもよるが40分程蒸しあげる。
蒸しあがった時の鰻の身は見た目が赤みをおびている。
蒸しあがったらタレに浸し今度は身の方から弱火で焼く。
タレが固まらないように小まめに返し、4回たれを付けて5分程で焼き上げる。
焼く際は素焼き蒲焼とも手返し百遍と言われるように、ひんぱんにひっくり返しむらなく焼き上げる事が肝心である。
口にした瞬間に崩れるほど柔らかく仕上げられた鰻は、下町特有の辛口のタレのかもし出す香りと相まって絶妙の味となる。
天然鰻の産地には以前関東では利根川下流のほか印旛沼、手賀沼、霞ヶ浦等があったが水質汚染などもあり激減しているようである。
夏が旬のイメージがある鰻だが、天然物は夏場に餌を食べて栄養を蓄えるので秋から冬にかけて捕れる物が最も美味しいと言われている。
全国的には九州柳川、四国四万十川、北陸の三方五胡、山陰の宍道湖等が知られている。
鰻の蒲焼は俗に「くし打ち3年、裂き5年、焼きは一生」と言われている。
鰻職人にとって焼きは、一生の修業と言う事になりその腕の見せ処となる。
江戸末期創業の名店「竹葉亭」にはかつて焼政と呼ばれた名職人浅野政吉がいて、「竹葉亭」の名を高めたと聞いた事がある。
木挽町の本店は、大正期に建てられた茶室と座敷を持ち風情あるたたずまいで客を迎えている。
江戸前の鰻店の系統では大和田を名乗る店も多い。
本家とされるのは尾張町大和田であるが、そこで修業し暖簾分けされて店を出しまたその暖簾分けされた店で修業し大和田を名乗る。
大和田を名乗る店は新橋の「大和田」柏の「大和田」台東区竜泉の「大和田」の他多くある。

                                       文責:小堺化学工業㈱ 営業部長 青木知廣
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by kosakai_blog | 2014-11-21 14:11 | 食のサロン
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