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食のサロン その57 《江戸・東京 食事情 ① 豆腐の話 Ⅰ》 2015.1
中国生まれの豆腐が日本に渡ってきたのは平安時代の後期頃と言われている。
大陸からの渡来僧によって伝えられたとの説が有力であり、禅寺から全国に広がっていった物と想像される。しかし江戸時代初期には禁令があり、庶民には作ることも食べる事も許されては無かったらしい。
江戸時代中期になり豆腐が庶民の口に入るようになると、豆腐料理は急速に発展をする。
天明二年(1782年)には豆腐百珍なる料理本が出版され大好評となり翌年には続編も出版される。
当時「江戸の豆腐」と「京都の豆腐」は対比され、京都の豆腐は色も白く柔らかく美味しいが、江戸の豆腐は色も悪く硬く味も悪いと言われた。
豆腐好きであった南総里見八犬伝の作者滝沢馬琴は、京都で豆腐を食べ「祇園豆腐」は真崎の田楽に及ばず、「南禅寺豆腐」は淡雪に劣ると江戸の豆腐に軍配を上げている。
「真崎の田楽」とは、真崎稲荷の境内に田楽を売る茶屋が何軒もあり、お参りのついでに田楽を食べる庶民で賑わったと伝えられている。
池波正太郎の剣客商売に出てくる秋山大二郎の道場は、小説の中でこの真崎稲荷近くに建っていたとされている。
現在の荒川区南千住あたりとなる。
「淡雪」とはニガリで固めない柔らかい豆腐であり、この豆腐に葛餡を掛けて食べたとされる。
両国の回向院門前に2軒両国橋付近にも「淡雪豆腐」の店が数軒あったと伝えられる。
付け加えれば滝沢馬琴は江戸ひいきであり、京の豆腐にも勝るとの話と思われるが、当時「祇園豆腐」は全国的に知られていた。
京都八坂神社の2軒の茶屋は特に有名であり、その内の1軒は今に残る老舗料亭「中村楼」で現在も「田楽料理」で知られている。
当時は田楽に菜飯を添える事も流行し、浅草には「菜飯田楽」の店が多くあったと伝えられる。
現在では、愛知県豊橋にある「きく宗」の菜飯田楽が全国的に知られている。
現在豆腐の種類は「もめん」「きぬごし」「充填きぬごし」に分けられる。
大豆を水に浸した後砕いて呉(ご)を作り、熱を加え豆乳とオカラに分離する。
豆乳を凝固⇒くずし⇒圧搾⇒成型⇒水さらし冷却した物が「もめん豆腐」である。
豆乳をそのまま凝固⇒成型⇒水さらし冷却した物が「きぬごし豆腐」。
「充填きぬごし」は多くが工業的に作られるが、豆乳を一旦冷却⇒凝固剤を加え容器に充填後加熱凝固させる物で長期保存が可能になる。
昔より豆腐を固めるには「ニガリ」が用いられた。
現在豆乳を固める凝固剤としては
●塩化マグネシウム
●塩化カルシウム
●硫酸カルシウム
●グルコノデルタラクトン
●硫酸マグネシウム
●粗製海水塩化マグネシウム(塩化マグネシウム含有物)
の6種類がある。
一般的に言う「ニガリ」は塩化マグネシウムを主成分とし、海水から塩化ナトリウムを除いた物を言う。
すまし粉(硫酸カルシウム)も「嵯峨豆腐」で知られる京都の森嘉等広く使われている。
これら塩凝固に対して、グルコノデルタラクトン(GDL)は豆乳に混ぜるとグルコン酸が生成され豆乳を固める酸凝固である。
昭和30年代頃までの東京下町の朝は、豆腐売りのラッパの音から始まった物である。
朝食に豆腐の味噌汁が定番だった日本の朝は昔の話となりつつあるが、豆腐は日本人が愛してやまない食材である事に変わりはない。

                                      文責:小堺化学工業㈱ 営業部長 青木知廣
by kosakai_blog | 2015-01-14 16:36 | 食のサロン
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