食のサロン その60 《江戸・東京 食事情 ④ イノシシ》2015.4
江戸時代獣肉を食べると言う事は仏教の考えからも無かったとされている。
しかし実際には江戸庶民から大名に至るまで結構食べられていた事実がある。
いわゆる精を付ける為の薬食いである。
落語藝術協会初代会長を努めた名人六代目春風亭柳橋の得意ネタの一つに「二番煎じ」と言う話しがある。冬の夜に火の用心の夜回り当番となった面々が猪なべで酒盛りを始めてしまい、見回りに来た奉行と騒動を起こす話である。
この話にあるように江戸庶民も体が温まる食べ物として猪肉を食べていたらしい。
実際に江戸の町中には獣肉を専門に食べさせる料理店も多くあったようである。
歌川広重の名所江戸百景、「びくにはし雪中」の絵の中には「山くじら」の看板が大きく描かれている。
比丘尼橋(びくにはし)は今の銀座付近、外堀と京橋川の接点に架かっていた橋と言われている。
看板の山くじら(山鯨)は猪肉の事で、獣肉一般の異称であったとされる。
獣肉を食べさせる店を「ももんじ屋」と言いこれは百獣(ももんじ)を表し江戸にはこの「ももんじ屋」として営業する店が結構あったと伝えられている。
食べ方としてはネギ等を加えて味噌仕立ての鍋で食べる事が多かったようである。
猪肉は牡丹、鹿肉は紅葉、とも呼ばれる事がある。
猪はその肉が牡丹の花のような色をしている事からそう呼ばれ、鹿は花札に描かれている鹿に紅葉の絵からそう呼ばれたと言われている。
三十六歌仙の一人、猿丸大夫の「奥山に モミジ踏みわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき」と言う歌に由来するとの説もある。
今に残る都内で獣肉を食べさせる店としては、両国橋の袂にある「ももんじや」が上げられる。
江戸時代より300年続く獣肉料理専門店である。
店頭には猪の剥製がぶら下がりメニューには鹿肉の刺身やタタキ、猪鍋、熊鍋等野獣肉の料理が並ぶ。
以前は狸汁(タヌキじる)も客に出していたが今はメニューから無くなってしまった。
この店でしか食べられない料理であったので残念であるが、独特の臭いがあったので客の注文が少なかったのかもしれない。
猪肉はやはり鍋にして食べるのが一番美味しいようである。
特製の味噌と割り下でじっくり煮込み、脂の部分がアメ色になった頃が食べごろである。
この店では好みにより唐辛子や粉山椒を振って食べる。
一般に肉類は煮すぎると硬くなるとされるが、猪肉は煮込んでも硬くならないらしい。
野生の猪は寄生虫がいる場合があるので良く煮て食べる必要もあるもかもしれない。
熊肉も同様である。
鹿肉は刺身で食べられるし鍋やステーキにしても美味しい。
こちらは火を通しすぎない方が軟らかくて美味しく食べられる。
今は冷凍にして保存する事が出来るがやはり冬の猟期で獲物が取れる時期が美味しい時期である。
この店の猪は、丹波篠山や三重の鈴鹿で仕留められた上質の物が使用されると言う。
12月に行われる秩父夜祭は地元秩父の最大のイベントであり多くの観光客で賑わう事でも有名である。
冷え込む秩父の夜を、祭り見物で過ごすのには名物猪汁は欠かせない。
夜祭見物をした人ならきっと寒い夜は猪肉で暖を取ると言う事を実感するのではないだろうか。

                              文責:小堺化学工業㈱ 営業部長 青木知廣
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by kosakai_blog | 2015-04-23 18:09 | 食のサロン
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